殺人者の懺悔を受け入れることについて
3巻 P.647-650
アブー・サイード・フドリーは伝えている
アッラーの預言者は言われた。
「あなた以前に在世した者で、99名の人を殺した者がいたが、その彼は現世で最も知識のある人物に、どうすればその罪から救われるか、についてたずねた。
この人物が或る修道士に会うよう指示したので、彼はその修道士の所に行き「99名の人を殺したが、懺悔すれば許されるだろうか」と質問した。
この時修道士は、「いいえ」と答えたため、彼は怒ってこの修道士を殺してしまった。
殺人の総数は100名になった。
彼は、その後、また、この現世で最も知識をもつ人物に頼み、或る学者を紹介してもらった。
それで、彼は、学者の処に行き、「100名殺したが、懺悔は受け入れられるだろうか」とたずねた。
学者は「その通りです」と答え、「あなたと懺悔の間を邪魔するものはなにもありません。
しかし、しかじかの土地に行きなさい。
そこには、アッラーを信仰する人がいる故、彼らと共にアッラーを信仰しなさい。
あなたの土地に戻ってはなりません。
そこは、あなたにとってよくない処です」と言った。
そこで、彼は出発したのであるが、道中半ばにして死んでしまった。
そのため彼について、慈悲担当役の天使たちと懲罰担当役の天使たちの間で意見の対立が起った。
慈悲担当役の天使たちは「彼は、アッラーに対し許しを願う懺悔者としてやってきたのです」といい、一方、懲罰担当役の天使たちは「彼は全く善事を行なわなかった」といった。
するとそこに、彼らの間の問題を解決するため人間の形をした別の天使が来て、「彼がどちらの土地により近かったのかによって決めるため距離を測るように」と指示した。
それで、天使たちは距離を測り、彼が、目指していた国により近づいていたことを知った。
慈悲を担当する天使たちは、その結果、彼を受け入れることになった。
このハディースに関連し、カターダは、ハサンの語った話によるとして、「死が迫った時、彼は、目的とする国の方に胸を地につけはいずりながら、少しでも近づこうとした」と記している。
アブー・サイード・フドリーは伝えている
預言者は言われた。
99名の人を殺した男が、その後、「懺悔すれば、許されるか」どうかについてたずねるため、修道士の処にきて質問し、「懺悔してもそれは許されない」と聞くと怒って彼をも殺してしまった。
その後、この男は、この件についてたずねるため村を出て、篤信者らの住む村を目指して旅していったが、その道中死んでしまった。
しかし、死の折にも彼は、うつぶせの状態で少しでも近づこうとはいずり進みながら息をひきとった。
この男に対し、慈悲担当の天使たちと懲罰担当の天使たちとの間に意見の対立が起った。
しかし、この男は、篤信者らの住む方角に、半分より、丁度手の長さほどであるが、近寄っていることがわかったため、篤信者の仲間に入れられた。
前記と同内容のハディースは、カターダによっても同じ伝承者経路で伝えられているが、これには、次の言葉がみられる。
「アッラーは、彼が出てきた土地に対し、遠ざかるよう命じ、彼が行こうとしていた土地に対しては、近づくようお命じになった。
アブー・ムーサーは伝えている
アッラーのみ使いは言われた。
「復活の日が来ると、アッラーは全てのムスリムに対し、ユダヤ教徒やキリスト教徒を一人づつひきわたし、“これが業火から、あなたを守るための身代りになる”といわれる(注)」
(注)ユダヤ教徒とキリスト教徒は、彼らの誤まった信仰故に、業火に投げ込まれる故、その分だけムスリムが天国に入る余地が多くなる意
アブー・ブルダは彼の父から聞いて語っている
預言者は言われた。
「アッラーが、ユダヤ教徒、または、キリスト教徒を身代りとして業火に投げ入れるので、ムスリムはそこで死ぬことはない」
ウマル・ビン・アブドル・アズィーズは、アブー・ブルダの父がアッラーのみ使いから聞いたこのハディースを語ったのは真実であると述べ、「彼以外に神は存在しないというその御方アッラーにかけて!」と三度繰返して唱え誓った。
前記と同内容のハディースは、アウン・ビン・ウトバによっても同じ伝承者経路で伝えられている
アブー・ブルダは、彼の父から聞いて伝えている。
預言者は言われた。
「復活の日、ムスリムの或る人たちは、山のように思い罪を背負いながらやってくるが、アッラーは彼らを許し、ユダヤ教徒やキリスト教徒を彼らの身代りになさるだろう」
これに関連し、アブー・ラウフは「誰が、このハディースの真実性について、疑問視しているのか私は知らない」と語った。
ともあれ、アブー・ブルダは、次のように述べている。
「私は、このハディースをウマル・ビン・アブドル・アズィーズに話したが、この時、彼は、“あなたの父が預言者から直接聞いて、これを伝えたのですか”と言った。
私は“そうです”と答えた」
サフワーン・ビン・ムフリズは伝えている
ある男が、イブン・ウマルに対し「アッラーのみ使いが、個人的に話したことをなにか聞きましたか」とたずねた。
それに対し、イブン・ウマルはみ使いが次のように言われるのを聞いたと語った。
「復活の日、信仰者は主の許に連れ出されるが、その時、アッラーは、ヴェールをかぶっておられる。
信仰者は罪状について聞かれ、“その罪を認めるか”と問われる。
彼が“主よ、認めます”と答えると“私は、お前に、地上では罪をかぶせたのであるが、今日、それを許すであろう”と言われ、彼の善行の記録簿をお与えになる。
不信仰者らや偽信者らは、創造物全ての前で“彼らは、アッラーについて虚偽を語った者らである”と布告される」