寿命や生計などは以前に定められたものから増えもしなければ減少することもない
3巻 P.584-586
アブドッラーは預言者の妻ウンム・ハビーバが次のように語ったとして伝えている
アッラーよ、私の夫であるアッラーの使徒と私の父であるアブー・スフヤーンと私の兄のムアーウィヤをして私に末永く享受せしめたまえ。
すると預言者は次のように言った。
あなたはアッラーがすでに確定された寿命と定められた日数と分配済みの恵みを更に増やすようにお願いしましたね?
しかしアッラーは物事を決してその時が来る前に早めたりその時の後に延期したりはしません。
しかしもしあなたが火獄の責め苦または墓穴の責め苦からの助けをアッラーにお願いするのなら、それはあなたにとって良い事であり、またその方がずっとよいことです。
ここでアブドッラーはさらにつづけて次のように付け加えた。
そして彼(預言者)のもとで猿のことが話題にされた。
ところで伝承者の一人ミスアルは「私は彼(アッラー)が変形した豚についても言及したと思う」と伝えた。
いずれにせよ、そこで預言者はこう言った。
アッラーは子孫に変形を行わなかった。
また猿や豚はそれ(注)以前から既に存在していた。
(注)多分安息日の綻を破って猿と豚にされたイスラエルの民の話し(第2章65節)の事件以前という意味であろう
ミスアルは前記と同様のハディースを伝えている。
ただしイブン・ビシルとワキーウの伝えたハディースでは「火獄の責め苦と墓穴の責め苦から」となっている。
アブドッラー・ビン・マスウードはウンム・ハビーバが次のように語ったとして伝えている
アッラーよ、私の夫であるアッラーの使徒と私の父であるアブー・スフヤーンと私の兄であるムアーウィヤをして私に末永く享受せしめたまえ。
すると預言者は次のように言った。
あなたはアッラーに対して既に確定された寿命と歩みの定められている足跡と分配済みのみ恵みとを更に増やすようにお願いしましたね?
しかしアッラーは決して物事をその時が来る前に早めたり、その時の後に延期したりはしません。
仮にもしあなたが地獄の責め苦と墓穴の責め苦から守ってもらうべくアッラーにお願いしたのであれば、その方があなたにとってずっと良かったですよ。
すると一人の男が「アッラーの使徒よ、猿と豚は(安息日の掟を破ったイスラエルの民が)姿を変えられた者達なのですか?」と質問した。
すると預言者はこう言った。
アッラーは(理由もなく)人々をみじめに破滅したり、または苦しめたりはしなかった。
むしろ彼らには子孫を繁栄させています。
猿と豚はそれよりも以前から存在していたのです(注)。
スフヤーンは前記と同様のハディースを別の伝承者経路を経て伝えているが、ここでわずかな言葉の違いが見られる。
(注)仏教的論理からみれば人間と動物の魂の等価性に基ずく輪廻転生の思想からもわかるように人間と動物は因念によって結ばれている。
しかし家畜文化と食肉文化を前提とするイスラームにあっては食う立場と食われる立場からみても両者の間は永久に断絶していなければならない