預言者の娘ファーティマの徳
3巻 P.429-433
ミスワル・ビン・マフラマはこう伝えている。
彼はアッラーの使徒がミンバル(説教台)の上で次のように言っているところを聞いた。
ヒシャーム・ビン・ムギーラ家の者達が彼らの娘(注)とアリー・ビン・アブーターリブを結婚させる許しを私に求めてきた。
しかし私は絶対に彼らに許可を与えなかった。
それからまた私は彼らに許可を与えなかった。
さらにまた私は許可をしなかった。
ただしイブン・アブー・ターリブが私の娘を離婚して彼らの娘と結婚するのであれば別である。
なぜならば私の娘は私の一部であり、彼女を疑うことは私を疑うことであり、彼女を傷付けることは私を傷付けることである。
(注)アリーが結婚を申し込んだというアブー・ジャハルの娘のことである。
アブー・ジャハルはマッカの長老で預言者の敵であったがバドルの戦いで戦死した
ミスワル・ビン・マフラマはアッラーの使徒の言葉として次のように伝えている
ファーティマは私の一部である。
彼女を傷付けることは私を傷付けることである。
アリー・ビン・フサインはこう伝えている
彼らがフサイン・ビン・アリーの殉教の後にヤズィード・ビン・ムアーウィヤのもとから(逃れて)マディーナにやって来たとき、ミスワル・ビン・マクラマが彼(アリー・ビン・フサイン)に会い、そして「何か私に命じるようなことがありますか?」と尋ねた。
そこで私(アリー)は彼に「いいえ」と言った。
また彼は彼(アリー)にこう言った。
「あなたは私にアッラーの使徒の剣を渡してくださいませんか?
私は人々がそれをあなたから奪い取るのではないかと心配です。
アッラーに誓って、もしあなたがそれを私に渡して下さるならば、私が生きている限りは誰れも決してそれを奪うことはできません。」
確かにアリー・ビン・アブー・ターリブはファーティマがいるにもかかわらずアブー・ジャハルの娘と婚約をした。
そして私はアッラーの使徒がその日、この彼のミンバル(説教台)の上で人々に次のように演説をしているところを聞きましたが、そのとき私は青年でした。
ファーティマは私の一部である。
彼女が宗教に関して苦境に立たされることが心配である(注1)。
それから彼はアブド・シャムス家出身の義理の息子(注2)のことを述べた。
彼は義理の息子としての彼の態度をほめてこう言った。
彼が私に語れば必ず真実を語り、彼が私に約束すれば必ず実行する。
私は決して合法的なことを非合法とはしない。
また非合法なことを合法とはしない(注3)。
しかしアッラーに誓って、アッラーの使徒の娘とアッラーの敵(アブー・ジャハル)の娘とが決して一つ場所で一緒にはならない。
(注1)その原因は人間世界の嫉妬心によって引き起こされるケースをここでは想定している
(注2)預言者の娘のザイナブの夫、アブー・アース・ビン・ラビーウのこと。
(注3)つまリアッラーが合法としたものを非合法としたリ、非合法としたものを合法とはしない意
ミスワル・ビン・マフラマはこう伝えている
アリー・ビン・アブー・夕ーリブはアブー・ジャハルの娘と婚約した。
そのとき彼のもとにはアッラーの使徒の娘ファーティマが(妻として)いた。
そしてファーティマがそのことを聞いたとき彼女は預言者のところに来て彼にこう言った。
「人々はあなたはあなたの娘達のために怒らないと言っています。
今アリーがアブー・ジャフルの娘と結婚しようとしています。」
さらにミスワルはつづいてこう伝えている。
そこで預言者は立ち上ったが、そのとき私は彼がタシャッハド(証言儀礼)を行い、それから次のように言ったところを聞いた。
さて確かに私は(私の娘を)アブー・アース・ビン・ラビーウと結婚させた。
そして彼は私に語れば必ず真実を語リます。
またムハンマドの娘ファーティマは私の一部です。
そして私は彼らが彼女を苦境に立たせることを嫌っています。
アッラーに誓って、アッラーの使徒の娘とアッラーの敵の娘が決して一人の男のもとで一緒にはならない。
こうしてアリーは婚約を破棄しました。
同様のハディースがズフリーによって別の伝承者経路を経て伝えられている。
アーイシャは次のように伝えている
アッラーの使徒は彼の娘ファーティマを呼び、彼女に何事かを秘かにささやいた。
すると彼女は泣いた。
それからまた彼は彼女に秘かに何事かをささやいた。
すると彼女は笑った。
そこで私は彼女にこう尋ねた。
「アッラーの使徒があなたに秘かにささやいて、それであなたが泣いたことは何ですか?
またあなたに秘かにささやいて、それであなたが笑ったことは何ですか?」
そこで彼女は次のように答えた。
「彼は私に秘かに彼の死のことを伝えたので私は泣きました。
それからまた私が彼の家族の中で彼の後を最初に追う者(注)であると伝えたので私は笑いました。」
(注)つまり天国へ行くの意味で、彼女が夫や子供達よりも早く死んで預言者と天国で最初に会うだろうということを暗示している
アーイシャは次のように伝えている
預言者の妻達が(彼の最後の病気のときに)彼のもとに(集って)いたが彼女達の誰もその場を離れようとしなかった。
そこヘファーティマが歩いてやって来た。
そして彼女の歩く姿はアッラーの使徒が歩く姿と全く変わらなかった。
そして彼が彼女を見たとき彼は彼女を歓迎して「良く来た、我が娘よ」と言った。
それから彼は彼女を彼の右側もしくは左側に座らせた。
そして彼は彼女に秘かに何事かささやいた。
すると彼女は激しく泣いた。
そこで彼は彼女の悲しみを見たとき、また再び彼女に秘かに何事かをささやいた。
すると彼女は笑った。
そこで私は彼女に次のように言った。
「アッラーの使徒は彼の妻達のいる中で特にあなただけにささやきました。
そして(それを聞いて)あなたは泣きました。」
それからアッラーの使徒が(病気から)立ち直ったとき、私は彼女にアッラーの使徒が何を言ったか尋わました。
すると彼女は「私はアッラーの使徒のことで、彼の秘密を公表しません」と言った。
さてアッラーの使徒が亡くなられたとき私は彼女に次のように言った。
「私はあなたに次のことを尋ねる権利があると考えます。
一体アッラーの使徒はあなたに何と言ったのですか?
私に教えて欲しい。」
すると彼女「はい、今なら」と言い次のように伝えた。
最初に彼が私に秘かにささやいたことについては彼は私にこう伝えたのです。
ジブリールは毎年一回か二回彼とクルアーンを誦んでいました。
しかし今年はもう二回誦みました。
そこで私(預言者)は死期が近いと思いました。
アッラーを恐れ、耐えなさい。
私こそあなたにとって最も素晴しい先人となるでしょう。
それであなたが見たように私は泣きました。
それから彼が私の悲しみを見たとき、彼は再び私に秘かに次のことをささやきました。
ファーティマよ、あなたは信者の妻達の長もしくはこのウンマ(信仰共同体)の女性達の長になることを喜ばないのですか?
それで私はあなたが見たように笑いました。
アーイシャは次のように伝えている
預言者の妻達が(彼の最後の病気のとき彼のもとに)集まっていたが、彼女達の誰もその場を離れようとはしなかった。
そこへファーティマが歩いてやって来た。
彼女の歩く姿はアッラーの使徒の歩く姿のようであった。
(彼が彼女を見たとき彼は彼女を歓迎して)
彼は「よく来た、我が娘よ」と言った。
それから彼は彼女を彼の右側もしくは左側に座らせた。
そして彼は彼女に秘かにささやいた。
すると彼女は泣いた。
(彼は彼女の悲しみを見たとき再び)
彼は彼女に何事かを秘かにささやいた。
すると彼女は笑った。
そこで私(アーイシャ)は彼女に「何があなたを泣かせるのですか?」と言った。
すると彼女は「私はアッラーの使徒の秘密を公表しません」と言った。
そこで私は「私は今日のように悲しみに近い喜びを見たことがありません」と言った。
そして私は彼女が泣いたときこう言った。
「アッラーの使徒は私達ではなく特にあなたに何かをささやきそれであなたは泣きましたね?」
そして私は彼が言ったことについて(彼女に))尋ねました。
だが彼女は「私はアッラーの使徒の秘密を公表しません」と答えた。
さてアッラーの使徒が他界したとき私は再び彼女に尋ねた。
すると彼女は彼は(そのとき)次のように言ったと答えた。
天使ジブリールは毎年一回彼(私)とクルアーンを誦んでいました。
しかし今年はもう二回誦みました。
そこで私は私の死期が来たと考えました。
あなたは私の家族の中で(天国で)私に最初に出会う者となるでしょう。
そして私はあなたの良き先人となりましょう。
このため私は泣きました。
それから彼は再び秘かに次のことをささやきました。
あなたは信者の妻達の長もしくはこのウンマの女性達の長となることを喜ばないのですか?
それで私は笑いました。