疫病に関して
3巻 P.264-269
アーミル・ビン・サアド・ビン・アブー・ワッカースは彼の父を根拠として伝えている
彼は彼の父(サアド)がウサーマ・ビン・ザイドに「あなたはアッラーのみ使いからペストに関して何か聞きましたか」と尋ねるのを聞いた。
ウサーマは「アッラーのみ使いは『ペストはイスラエルの民、あるいはあなた方以前にこの世に在った者に下された天罰、あるいは懲罰である。
それであなた方は、どこかの地にそれが発生したことを聞いた時は、そこに行ってはならない。
またそれがあなた方の居る所に発生した時は、そこから逃れるようにして出て行ってはならぬ(注)」と申された。
アブー・ナドルは(前述のハディースにある預言者の言葉の最後の部分を)誤って伝えている。
(注)人心を惑わしたリ、動揺させたりしないためである
ウサーマ・ビン・ザイドは伝えている
アッラーのみ使いは「ペストは天罰の印である。
至高偉大なるアッラーはそれによって下僕たる人々をお試しになる。
あなた方がそれについて聞いた時は、それが発生した所に入ってはならぬ。
また、あなた方の居る地にそれが発生したら、その地から逃げてもならぬ」と申された。
ウサーマは伝えている
アッラーのみ使いは「まこと、このペストはあなた方以前に生きた者、あるいはイスラエルの民に対して下された天罰であった。
それで、それが居住地域に発生した時はそこから逃がれるようにして出て行ってはならぬ。
またそれが発生した地に入ってもならぬ」と申された。
アーミル・ビン・サアドは伝えている
ある男がサアド・ビン・アブー・ワッカースにペストについて尋ねた。
するとウサーマ・ビン・ザイドが「私がそれについて話そう。
アッラーのみ使いは『それはアッラーがイスラエルの民の一集団に、またはあなた方以前に生を受けたある人々に対して下された懲罰、あるいは天罰である。
それで、あなた方は、それが発生したことを聞いた時は、そこに入ってはならぬ。
それがもしあなた方の地に入って来た時はそこを逃れるようにして出て行ってもならぬ』と申された」と言った。
このハディースは別の伝承者経路でも伝えられている。
ウサーマ・ビン・ザイドは伝えている
アッラーのみ使いは「まこと、この苦痛、または病は、あなた方以前のある民族がそれによって罰せられた天罰なのである。
その後それがこの地球上に残り、時々流行を見る。
それで、それがある地に発生したことを聞いた者は決してその地に行ってはならぬ。
またそれが発生した地にたまたま居合わせた者は、あわててそこから逃げ出してもならぬ」と申された。
前述のハディースは異った伝承者経路でも伝えられている。
シュウバはハビーブからの話として伝えている
われわれがマディーナに居た時、クーファでペストが発生したということが伝えられた。
するとアターウ・ビン・ヤサール、その他の者が「まこと、アッラーのみ使いは『もしあなたが、それが発生した地に居た時は、そこから出てはならない。
そして、もしある地にそれが発生したことを知った時は、そこに入ってもならない』と申された」と私(ハビーブ)に言った。
私は「誰から(それを聞いたのか)」と言った。
彼等は「アーミル・ビン・サアドがそれを話した」と言った。
それで私は彼の所に行った。
すると人々は「彼はここには居ない」と言った。
私は彼の兄弟であるイブラーヒーム・ビン・サアドに会って尋ねた。
彼は「私はウサーマがサアドに(次のように)話していたということを証言する。
(すなわち)ウサーマは「私はアッラーのみ使いが『まこと、この苦痛はあなた方以前のある人々がそれによって罰っせられた天罰、あるいは懲罰の残余である。
それでもしあなた方がいる地にそれが発生した時は、そこから出てはならない。
また、それがどこかに発生したことを聞いた時は、そこに入ってもならない』と申されるのをお聞きした」と言った。
ハビーブは「私はイブラヒームに、あなたはウサーマがサアドに(それを)話すのを聞いたのですか。
また(それを聞いて)彼は否認しませんでしたかと」言った。
彼は「はい、しませんでした」と言った。
前述のハディースはシュウバを根拠としても別の伝承者経路で伝えられているが、これには前述のハディースの初めの部分にあったアターウ・ビン・ヤサールその他によって話された事柄は述べられてはいない。
前述のハディースは別伝承者経路でも伝えられている。
イブラヒーム・ビン・サアド・ビン・アブー・ワッカースは伝えている
ウサーマ・ビン・ザイドとサアドは話しながら座っていた。
そしてその二人は「アッラーのみ使いは申された」と言って前述のような話をした。
このハディースは別伝承者経路でも伝えられている。
アブドッラー・ビン・アッバースは伝えている
ウマル・ビン・ハッターブはシャーム(シリア)へ出かけた。
彼がサルグ(ヒジャーズからシャームに入って直ぐの村落)に着くと、その地区の軍司令官アブー・ウバイダ・ビン・ジャッラーフやその友人達が彼を出迎えた。
そして疫病(ペストであると言われる)がシャームに発生したと告げた。
イブン・アッバースは(次のように)言った。
その時ウマルは「ここに最初のムハージル達を呼び集めよ」と言った。
私は彼等を呼び集めた。
ウマルはシャームに疫病が発生したことを伝え(前進すべきか、引くべきかについて)彼等の意見を求めた。
すると彼等の意見は分かれ、ある者達は「あなたは重大な問題のために来られたのです。
あなたがそのことから退くのは賛成出来かねます」と言った。
またある者達は「あなたは前途有望な人々や預言者の教友達の命を預っておられます。
故にそれらの人々をその疫病の地に敢えて行かせることには賛成しかねます」と言った。
すると彼は「あなた方は下ってよい」と言った。
そして「次にアンサールを呼び集めよ」と言った。
私は彼等を呼び集めた。
彼は彼等の意見を求めた。
すると彼等も前者と同じ考えを示しその意見は二分された。
ウマルは「あなた方は下ってよい」と言った。
次に彼は「私に、クライシュの長老達の中で、マッカ征服前に移住した者達を呼び集めよ」と言った。
私はその人達を集めた。
すると彼等は皆「われわれは、あなたが人々を連れて戻られ、敢えて疫病のある地に行かせぬ方がよいと思います」と異口同音に述べた。
それでウマルは人々に「私は明朝、乗り物に乗って(マディーナに)向う。
諸君もその用意をせよ」と号令した。
その時アブー・ウバイダ・ビン・ジャッラーフが「あなたはアッラーの御決定から逃がれるのですか」と言った。
するとウマルは「アブー・ウバイダよ、もし君以外の者がその言葉を言ったのであれば(注)(と言って黙った。
ウマルはアブー・ウバイダとの対立を嫌がっていたのである。
それで)そうだ、われわれはアッラーの御決定からアッラーの御決定に逃避するのだ。
ところで君(次のようなことを)考えて見ないか、つまり君がラクダをもっていてたまたま緑に覆われた側と草木一本無い側とをもつ洞谷に降りたとしよう、それでもし君が緑の側に出てラクダに草を与えたとすれば、それはアッラーの御決定によってそうしたのではないのだろうか。
またもし君が不毛の側に出てそれに餌を与えられなかったとしても、それもまたアッラーのお定めに従ったものではないのだろうか」と言った。
その時、アブドル・ラフマーン・ビン・アウフがやって来た。
彼はある用事のために不在であった。
そして「私にはそれについて、ある知識がある。
私はアッラーのみ使いが『あなた方は、もしある地に疫病が発生したことを聞いた時はそこに行ってはならぬ。
またもしそれがあなた方の居る地に発生した時はそこから逃れるようにして出てはならぬ』と申されるのを聞いた」と言った。
ウマル・ビン・ハッターブはアッラーを讃美し(そこを)後にした。
(注)これの応答節は述べられてはいないが次の二つが考えられている。
一、「うなずけもしよう。だが博識の君がそれを言うとは鴛きである」
二、「罰したであろう」
前述のハディースは別伝承者経路で伝えられているが、それには(次のような)表現がある
それで彼(ウマル)はアブー・ウバイダに「もし人が肥沃な地があるにもかかわらずそれを放棄し、不毛の地で放牧したなら、君はその者を無能な者と極めつけたのではないか」と言った。
彼は「その通りである」と言った。
ウマルは「それでは、(私に)続け」と言った。
こうして彼は引き返し、マディーナに戻って来た。
そして「この場所は、またはこの家は健全な所である。
インシャー・アッラー」と言った。
アーミル・ビン・ラビーアは伝えている
ウマルはシャームに向って(マディーナを)出た。
彼がサルグに着いた時、シャームに疫病が発生したということが伝えられた。
するとアブドル・ラフマーン・ビン・アウフが彼に「アッラーのみ使いは『あなた方がある地に疫病が発生したことを聞いた時はそこに入ってはならぬ。
また、あなた方が在住する地にそれが発生した時はそこから逃れるようにして出てもならぬ』と申された」と告げた。
それでウマル・ビン・ハッターブはサルグから引き返した。
サーリム・ビン・アブドッラーは“ウマルが人々を引き連れて引き返した”(という言棄)はアブドル・ラフマーン・ビン・アウフのハディースから得たものである」と言った。