天使は犬がいたリ、画がある家には入らない
3巻 P.197-205
アーイシャは伝えている
天使ガブリエルはアッラーのみ使いを訪れる時刻について、その御方と約束を交わしました。
しかしその時刻が来ても彼は訪れませんでした。
み使いは手にされていた杖をお投げになり「アッラーは約束を絶対に違えられぬし、その御使者達も同様である」と申されました。
その時み使いはその御方の寝台の下に子犬がいるのに気が付かれました。
そして「アーイシャよ、この犬は何時ここに入ったのか」と申されました。
私は「アッラーに誓って、私は存じませんでした」と言いました。
その御方は小犬を外に出すように御命じになりました。
するとガブリエルが訪れました。
アッラーのみ使いは「あなたは私に約束されました。
それで私はあなたをお待ちして座って居りましたが来られませんでした」と申されました。
天使は「あなたの家にいた犬が私(の訪間を)妨げたのです。
私達は犬のいる家や画のある家には入りません」と言いました。
前述のハディースは別の伝承者経路で伝えられている。
だがそれは前述のもの程は長くない。
マイムーナは伝えている
アッラーのみ使いはある日、沈痛な御様子で朝をお迎えになった。
マイムーナは「アッラーのみ使い様、私は今日、あなたにいつもと違った御様子を拝見するのですが」と言った。
み使いは「ガブリエルは夜、私と会う約束をしたが私を訪れなかった。
アッラーに誓い、彼が約束を違えることはないのだが」と申された。
それでアッラーのみ使いはその日を(沈痛な面持ちで)過ごされた。
その後み使いは、われわれのテントの下に小犬がいるのに気付かれた。
それでその小犬を外に出すよう御命じになった。
それからその御方は水を手にされそれがいた場所に撒かれた。
夕刻になった時、ガブリエルがその御方を訪れた。
み使いは「あなたは昨夜、私と会う約束をされておりましたのに」と申された。
天使は「その通りです。
しかし、私達は犬がいたり画のある家には入リません」と言った。
アッラーのみ使いは朝になると、その日、犬を殺すことを御命じになった。
(その命令では)小庭園(を見張る)犬は殺し、大庭園の犬は容赦する、というものであった。
アブー・タルハは伝えている
預言者は「天使は犬がいる家にはお入りにならないし、画のある家にもお入リにならない」と申された。
アブー・タルハは伝えている
私はアッラーのみ使いが「天使は犬がいる家にはお入リにならないし、画のある(家にもお入りにならない)」と申されるのを聞いた。
前述のハディースは別の伝承者経路でも伝えられている。
教友アブー・タルハは伝えている
アッラーのみ使いは「まこと、天使は画のある家にはお入りにならない」と申された。
ブスル(伝承者の一人)は、次のように言った。
ザイドが病気になった。
それで、われわれが彼を見舞いに行くと、画がかかれていたカーテンが扉の上に掛っているではないか。
私は預言者の妻マイムーナに養われていたウバイドッラー・ハウラー二―に「ザイドは以前、画に関して(み使いが御命じになったことを)われわれに告げなかったか」と言った。
するとウバイドッラーは「あなたは彼がそれを言った時“布の装飾以外は”と言ったのを聞かなかったのですか」と述べた。
アブー・タルハは伝えている
アッラーのみ使いは「天使は画のある家にはお入りにならない」と申された。
ブスルは(これに関し次のように)伝えている。
ザイド・ビン・ハーリドが病気になった。
それでわれわれは彼を見舞った。
われわれが彼の家に行ってみると、そこには画のあるカーテンが掛っているではないか。
私はウバイドッラー・ハウラー二ーに「彼はわれわれに(アッラーのみ使いが画に関して御命じになったことを)話さなかったか」と言った。
彼は「確かにザイドはそれについて話しましたが“布に描かれた装飾は除く”と言いました。
あなたはそれを聞きませんでしたか」と言った。
私は「いや、聞かなかった」と言った。
彼は「いいえ、彼は確かにそれについて述べました」と言った。
アブー・タルハ・アンサーリーは伝えている
私は、アッラーのみ使いが「天使は犬のいる家や肖像画のある家にはお入りにならない」と申されるのを聞いた。
私はアーイシャの所に行き「私は預言者が『天使は犬がいたり、肖像画のある家にはお入りにならない』と申されたということを伺ったのですが、あなたはアッラーのみ使いがそう言われるのをお聞きになりましたか」と言った。
彼女は「いいえ(私はそれについては聞いておリません)
しかし、私はあの御方がなされたことで、私が見たことをあなた方にお話し致しましょう」と言って(次のように)話した。
あの御方が遠征にお出でになリました。
それで私はカーペットを利用し、それで戸口を覆いました。
み使いがお帰リになりました時、そのカーペットを御覧になリました。
私はお顔を見て、その御方がそれに嫌悪されているのを知りました。
み使いはそれを引き下ろして裂き、それに描かれていた画を引き裂かれました。
または切断されました。
そして「まこと、アッラーは石や土(壁)に衣を着せることは御命じにはならなかった」と申されました。
私達はそれを切りました。
そして枕を二つ作り、それになつめ椰子の繊維を入れました。
その御方はそれについては私をお筈めにはなりませんでした。
アーイシャは伝えている
私達の許に鳥の画の入っているカーペットがございました。
それは家に入る者を正面で迎えるよう置かれておりました。
アッラーのみ使いは私に「これを(他のものに)変えよ。
私はここに入る度にこの世(の楽しみごと)を思い出す」と申されました。
彼女は(また)「私達の許には絹の伏繍がほどこされたビロードの衣服がございましたが、私達はそれを着用しておりました」と言った。
前述のハディースはイブン・ムサンナーを根拠としても伝えられているが、それには“アッラーのみ使いはそれを裂け、という御命令はされなかった”という付加がある。
アーイシャは伝えている
アッラーのみ使いが旅からお帰りになりました。
その時私は戸口を力ーテンで覆っておりましたが、それには翼をもった馬の画が描かれておりました。
み使いは私に(それを取り除くよう)御命じになりました。
それで私はそれを取リはずしました。
前述のハディースは別の伝承者経路でも伝えられているが、それには言葉に僅少の相違がある。
アーイシャは伝えている
アッラーのみ使いが私の所にお出でになりました。
その時私は画が描かれている薄いカーテンを(入口に)掛けておきました。
み使いは(それを御覧になると)お顔の色が変りました。
そしてそのカーテンを掴んで引き裂かれました。
そして「まこと、復活の日、最も厳しい罰を受ける人々の中には、アッラーの創造を擬(なぞら)える人々がある」と申されました。
アーイシャは伝えている
アッラーのみ使いが私の所にお出でになりました。
残余のハディースは前述と同様であるが、これには“その御方はカーテンの方に近寄られ、それを手で引き裂かれた”という部分があり、その点が他と異っている。
前述のハディースは別の伝承者経路でも伝えられている。
それには“まことに、最も厳しい罰を受ける人々は”と述べられ、“人々の中には”とは述べられてはいない。
アーイシャは伝えている
アッラーのみ使いが私の所にお出でになりました。
その時私は肖像画のついた薄い力ーテンで棚を覆っておりました。
その御方はそれを御覧になると(それを掴んで)引き裂かれ、お顔の色は変リました。
そして「アーイシャ、復活の日、アッラーの御許で最も厳しい罰を受ける人々は、アッラーの創造を擬える者達である」と申されました。
アーイシャは伝えている
私は画が描かれている布を持っておりましたのでそれを棚の前に掛けておりました。
み使いは常にその側で礼拝を捧げておられました。
そして私に「それを除けよ」と申されましたので、私はそれを取りはずしました。
アーイシャは伝えている
預言者が私の所に来られました。
その時私は画が描かれているカーテンを掛けておりました。
するとその御方はそれを取り除かれました。
それで私はそれを利用してクッションを二つ作りました。
預言者の妻アーイシャは伝えている
私は画のついている力ーテンを掛けました。
(でもそれは)アッラーのみ使いがお出でになって、それを取り除かれました。
私はそれを切ってクッションを二つ作りました。
その頃、集会にいた一人の男(彼はラビーア・ビン・アターウといいズフラ族のマウラーであった)がイブン・カーセムに「あなたはアブー・ムハンマド(カーセムの祖父)の(次のような)言葉を聞かなかったでしょうか。
それはアーイシャが『アッラーのみ使いはその二つのクッションに寄り掛っておられました』と言ったという言葉です」と言った。
イブン・カーセムは「いいえ(聞きませんでした)。
しかし私は力ーセム・ビン・ムハンマドがそのように言うのを聞きました」と言った。
アーイシャは伝えている
私は画が描かれているクッションを買いました。
アッラーのみ使いがそれを御覧になった時、入口の所にお立ちになったまま中にはお入りになりませんでした。
私はその御方のお顔に嫌悪の御様子を見てとりました。
またはそれを知らされました。
それで私は「アッラーのみ使い様、私はアッラーに対し、またそのみ使いに対し(まことに申し訳ないことをした様子にて)後悔致しておリます。
どうか私が犯した罪が何かを(お話し下さい)」と言いました。
するとアッラーのみ使いは「このクッションは何か」と申されました。
私は「その上にあなたがお座わりになり、頭をお置きになるように買い求めたものでございます」と申し上げますと、み使いは「まこと、この画を描いた者達は懲罰を受けるであろう。
そして彼等は『汝等が創造したものに生を与えて見よ』と言われるであろう」と申されました。
そして更に「まこと、画のある家に天使はお入りにはならない」と申されました。
前述のハディースはアーイシャを根拠として、他の伝承者維路でも伝えられている。
それらの中には他のハディースには無い事柄を伝えているものがある。
(例えば)マージシューンの甥のハディースには“彼女は「私はそれを利用し、肘を掛けるクッションを二つ作りました。
その御方は家でそれに寄つ掛っておられました」と言った”と述べられている。
イブン・ウマルは伝えている
アッラーのみ使いは「画を描く者達は復活の日、懲罰を受けるであろう。
彼等は『汝等が創造せるものに生命を与えて見よ』と言われるであろう」と申された。
イブン・ウマルを根拠として伝えられた前述のハディースは、他の伝承者経路でも伝えられている。
アブドッラーは伝えている
アッラーのみ使いは「まこと、復活の日、最も厳しい懲罰を受ける人々は画を描く者達である」と申された。
アシャッジュ(伝承者の一人)は“まこと”という強調詞は文頭には置かなかった。
前述のハディースは、別の伝承者経路で伝えられている。
その中で彼は“み使いは「まこと、復活の日、地獄の住人達の中で最も厳しい懲罰を受ける人々の中には画を描く者達がある」と申された”と述べている。
ムスリム・ビン・スバイフは伝えている
私はマスルーク(伝承者の一人)と一緒にマリアの肖像のある家にいた。
するとマスルークが「これはキスラー(ペルシア王の異名)の肖像である」と言った。
私は「そうではない。
これはマルヤムの肖像である」と言った。
するとマスルークは「私はアブドッラー・ビン・マスウードが『アッラーのみ使いは“復活の日、最も厳しい懲罰を受ける人々は画を描く者達である”と申された』と言うのを聞いた」と言った。
ムスリムは言った。
私はナスル・ビン・アリー・ジャフダミーが、アブドル・アーラー・ビン・アブドル・アーラーから聞いて書き留めたものを、彼の前で読んだ。
それはサイード・ビン・アブー・ハサンを根拠にしたものであった。
(以下はその内容である)
一人の男がイブン・アッバースの所に来て「私はこれらの画を描く者ですが、それについて私に法的な判断をお示し下さい」と言った。
彼は「私の近くに寄りなさい」と言った。
その男は近づいた。
するとなお「私の側に寄りなさい」と言った。
彼はすぐ側に近づいた。
すると彼は手をその男の頭に置き「私がアッラーのみ使いからお聞きしたことを君に告げよう。
私はアッラーのみ使いが『(動物を描く)画家は皆火獄に落ちるであろう。
アッラーはその者が描いた画の一つ一つに生命をお与えになる。
するとそれが彼を地獄で苦しめるであろう』と申された」と言った。
なおイブン・アッバースは「もし君がどうしてもそれをしなければならないのなら、樹木や生命の無い物を描くがよい」と言った。
ナスル・ビン・アリーはこの話が正しいことを認めた(注)。
(注)イスラームが偶像崇拝を否定して来たことは良く知られている。
これは絵画の場合も同様で、動物、特に人物を描くことは禁じられている。
だからと言ってこの宗教が芸術に反対の立場を取ったわけではない。
それは今日、この地域独特の文芸、能書(カリグラフィ)、建築術、アラベスク等々を見ても容易に理解出来るところである
ナドル・ビン・アナス・ビン・マーリクは伝えている
私はイブン・アッバースの側に座っていた。
その時彼は(イスラーム法の)法的効力を有する判断を示し始めたが、彼は「アッラーのみ使いが申された」とは言わなかった。
だが一人の男が「私がこれらの画を描く者です」と言って彼に尋ねた時
イブン・アッバースは「私はアッラーのみ使いが『この世で画を描く者は、復活の日、その画に生命を与えることを強いられる。だが彼にはそれは出来ない』と申されるのを聞いた」と言った。
ナドル・ビン・アナスは伝えている
一人の男がイブン・アッバースの所に来た。
彼は預言者から聞いた話をした。
残余の話は前述と同様である。
アブー・ズルアは伝えている
私はアブー・フライラと共にマルワーンの家に入った。
するとアブー・フライラはそこに画があるのを知った。
この時、アブー・フライラは(次のように)言った。
私はアッラーのみ使いが「至高偉大なるアッラーは『わが創造の如くに創造することを試みる者以上の不正行為者があろうか。
(そのような者達には)原子を創造せしめよ。
または小麦の種子を創造せしめよ。
あるいは大麦の種子を創造せしめよ』と仰せられた」と申されたのを聞いた。
このハディースはアブー・ズルファを根拠としても伝えられたが、彼はその中で(次のように)述べている。
私とアブー・フライラはサイード、またはマルワーンのためにマディーナに建てられた家に入った。
彼はそこに画のあることを知った。
この時彼は「アッラーのみ使いが申された」と言って前述のような話をしたが「あるいは大麦の種子を創造せしめよ」という言葉は述べなかった。
アブー・フライラは伝えている
アッラーのみ使いは「天使は肖像画または絵画のある家にはお入りにはならない」と申された。