処女との結婚に関して
2巻 P.501-505
ジャービル・ビン・アブドッラーはこう語っている
私は、或る女性と結婚した。
アッラーのみ使いが、私に「結婚したのか」といわれた時、私は、「はい」と答えたが、その折、み使いは「相手は処女だったのか、それとも結婚体験者だったのか」ともいわれたので、それには、私は、「相手は以前結婚したことのある女性です」と答えた。
み使いはこの折、「どうして、処女と結婚して楽しまなかったのか」といわれた。
なお、伝承者の一人、シュウバは、この話をアムル・ビン・ディーナールに語った時彼は
「私もジャービルからきいたが、彼はみ使いがこの折、『どうしてあなたは少女と結婚しなかったのか。
そうすれば、あなたは、彼女を楽しみ、彼女もあなたを楽しめたであろうに』といわれた」と話していたと伝えている。
ジャービル・ビン・アブドッラーは伝えている
私の父アブドッラーが死去し(注)、九人、または、七人の娘が残された。
私は、一度結婚したことのある女性を妻にした。
或る時、アッラーのみ使いが私に、「ジャービルよ、結婚したのか」といわれたので私が肯定すると、更に「処女とであるのか、それとも、結婚体験者とであるのか」とおたずねになった。
それに対し、私が「み使い様、結婚体験者とです」と答えると、み使いは、「どうして若い娘と結婚しなかったのか。
そうすれば、お互いにもっと楽しく遊べたであろうに。(もしくは、お互いに笑い合い楽しめたであろうに)」といわれた。
私はこの時、「私の父アブドッラーは、九人、または、七人の娘を後に残して、死去しました。
それ故、彼女らと同じ年頃の若い娘を嫁として家に入れる気にはなれなかったのです。
それで、私は、彼女らの世話をし、行儀作法を教えてくれる女性を選んだのです」といった。
み使いは、「アッラーが、あなたに祝福を給わんことを!(もしくは、善いことがあるように!)」といわれた。
(注)ジャービルの父、アブドッラーはウフドの戦い(625年)の折、殉教した
ジャービル・ビン・アブドッラーは伝えている
アッラーのみ使いは、私にむかって、「ジャービルよ、あなたは結婚したのか」といわれた。
この後半は、前記と同内容である。
なお、これには、「私は、彼女らの世話をし、髪を櫛けずってやる女性と結婚しました」という表現がみられ、最後は、「『よくやった』といわれた」という言葉で終っている。
ジャービル・ビン・アブドッラーは伝えている
私たちは、アッラーのみ使いと共に遠征した。
そして、帰途には私は歩みの遅いラクダをしきりに急がせた。
私のすぐ後には、先端に鉄をつけた棒を持ち、ラクダを駆りたててくる人がいた。
その時、私のラクダはかつてないほどの速さで進んでいたが、それに後から追いついてきたそのラクダの乗り手は、私がふり返ってみると、アッラーのみ使いであった。
み使いが、その折、「ジャービルよ、どうして急ぐのか」といわれたので私は、「み使い様、私は新婚者です」といった。
すると、み使いは、「相手は若い娘かそれとも、結婚体験者か」といわれ、私が、「以前結婚したことのある女です」と答えると「どうして若い娘と結婚しなかったのか、そうすれば、お互いに十分楽しめたであろうに」といわれた。
その後、私たちが、到着したマディーナの町に入ろうとした時、み使いは、「待ちなさい。
夜(夕刻)、町に入ることにしよう。
そうすれば、乱れた髪の女性は櫛けずり、夫と遠く離れて不細工に過ごしていた女性は身づくろいをすることができる。
そのあと町に入れば、すぐに楽しめるではないか」といわれた。
ジャービル・ビン・アブドッラーは伝えている
私は、アッラーのみ使いと共に遠征に出発した。
この折、私のラクダが遅れたので、み使いは、私の処にきて、「ジャービルよ」と呼び、私が「はい、み使い様」と答えると「どうしたのか」といわれた。
私は、その時、「私のラクダは歩みが遅く、疲れているようです。
そのため取り残されました」といった。
すると、み使いは、ラクダから降り、手にもっていた先の曲った杖で私のラクダをつついた後、私に「乗りなさい」といわれた。
私が乗ると、驚いたことに、ラクダは非常に早く歩くようになり、そのためみ使いから離れて先に進みすぎないよう手綱を、折々、引き締めなければならないほどであった。
この道中、み使いは私に「結婚したのか」といわれ、私が肯定すると、「相手は処女であったのか。それとも、結婚体験者であったのか」とまたいわれた。
そして、私が、これに対し、「以前結婚したことのある女です」と答えると「どうして若い女の子を娶らなかったのか。互いに十分遊べたであろうに」といわれた。
私はこの時、「私には姉妹たちがいるので、彼女らをうまく取り締り、髪を梳いてやったり、世話をしてやれる女性を選んだのです」といった。
み使いは、この折また、「もうすぐ家に着くが、家では楽しみが待っているぞ」といわれた。
み使いは、その後「あなたのラクダを売るつもりはないか」といわれ、私が肯定すると、1ウーキヤ《銀単位》で私からラクダをお買い上げになった。
やがて、み使いは(マディーナに)到着なさった。
私が、町に着いたのは朝方であった。
私はすぐにモスクに行ったが、その入口の処には、み使いが立っておられ、「今、到着したのか」といわれた。
私が「はい」と答えると、み使いは「ラクダをそこにつないで置きなさい」といわれ、そのまま、モスクに入って二ラカートの礼拝をなさった。
それで、私も中に入り、二ラカートの礼拝を行ない、そのあと、家に戻った。
み使いは、ビラールに、私のため1ウーキヤの銀を計るよう命じられ、それでビラールが天秤を使って重さを計ったので私はその銀を受取りに行った。
帰りかけた時、み使いが「ジャービルを呼び戻しなさい」といわれたため、私は、またみ使いの処に戻ったが、
その時、私は、“み使いはラクダをお返しになるかも知れない。もしそうであれば、大変、困ったことになる”と思った。
しかし、み使いは、この時「あなたのラクダを連れて行きなさい。
代金も(返す必要はなく)あなたにあげます」といわれた。
ジャービル・ビン・アブドッラーは伝えている
私たちは、アッラーのみ使いと共に旅をしていた。
私は、水を積んだラクダに乗っていたため、一行から遅れてしまった。
み使いは、この折、(私が思うに)手に持っていたなにかを使って、私のラクダを打つか、もしくは、突くかなさった。
その後、私のラクダは(早く歩くようになり)一行より先に進みだして、手綱をしめるのに苦労する程になった。
み使いが、私にこの時「ラクダをしかじかの値段で売りますか。
アッラーがお許し給わんことを!」といわれたので私は「アッラーの預言者様、ラクダはあなたのものです」といった。
(その後)み使いが再び、私に「ラクダをしかじかの値で売りますか。
アッラーが許し給わんことを!」といわれたので私はまた、「アッラーの預言者様、ラクダはあなたのものです」と繰り返していった。
この折、み使いは私に対して「あなたは、あなたの父の死後、結婚したのですか」といわれ、私が肯定すると、更に「相手は前に結婚したことのある女性ですか、それとも、処女でしたか」ときかれた。
私は、これに対し「相手は、以前に結婚したことのある女性です」と答えた。
み使いはこの時、「どうして、処女を娶らなかったのですか、そうすれば、互いにもっと楽しみ合えたでしょうに、また、互いに遊ぶことができたでしょうに」といわれた。
このハディースに関連し、アブー・ナドラは、「『これこれのことをしなさい。アッラーが許し給わんことを!』というのは、ムスリムたちが普段に使っていた言葉であった」と述べている。