イエスと偽キリスト(マスィーフル・ダッジャール)について
1巻 P.134-137
アブドッラー・ビン・ウマルによると、アッラーのみ使いはこういわれた
「或る夜、私はカーバの近くにいた。
その時、私はかつてあなたが見たこともないほど、白く美しい顔立ちの男を見かけた。
彼は巻毛で、それもあなたがかつて見たこともないほど美しい巻毛であった。
彼がそれを櫛ですいたため水がしたたり落ちていた。
後は二人の男(もしくは、二人の男の肩)に寄りかかりながら、カーバ神殿の周りをタワーフ(巡回)していた。
『彼はどなたですか』と私がたずねると、『マリヤの子イエスです』と告げられた。
この折、私はまた別の人物を見た。
その人は頑丈な体格をし、ちぢれ毛であったが右目がつぶれ、ふくれたぶどうのようになっていた。
『彼は誰ですか』と私がたずねると『彼はマスィーフル・ダッジャール(偽キリスト)です』と告げられた」
アブドッラー・ビン・ウマルによると或る日、アッラーのみ使いは人々にマスィーフル・ダッジャールについてこうお話しになった
「まことにアッラーの両眼は健全であられる。
しかるにマスィーフル・ダッジャールの右目は見えず、それもぶどうのように脹れ上っているのです」
つづいてアッラーのみ使いはこういわれた
「私は或る夜、夢でカーバの近くに、美しい顔立ちの男がいるのを示された。
その人は、あなたがかつて見たいかなる人よりもすっきりした顔立ちをしていた。
ほどよくちぢれた巻き毛は彼の両肩にかかり、そして頭からは水のしずくがたれ落ちていた。
彼は両手を二人の男の肩にかけ、その二人にはさまれながらカーバの周りをタワーフしていた。
『彼は誰ですか』と私がたずねると、人々は『マリヤの子メシヤ(キリスト)です』と答えた。
私はまた彼の後に、髪をちぢらした頑丈そうな、右目がつぶれた男を見た。
私がこれまで会った人々の中では、イブン・カタンによく似た顔付きの男だった。
彼は、カーバの周りをタワーフしながら、両手を二人の男の肩にかけていた。
『彼は誰ですか』と私がたずねると、人々は『マスィーフル・ダッジャールです』と教えてくれた」
イブン・ウマルによると、アッラーのみ使いはこういわれた
「私は、カーバの近くで、頭髪の長いすっきりした白い顔立ちの人物を見かけた。
彼は両手を二人の男の上においていた。
水が彼の頭から流れていた(もしくは、したたり落ちていた)。
私が『彼は誰ですか』とたずねると人々は『彼はマリヤの子イエス、もしくは、マリヤの子メシヤ(キリスト)です』と告げてくれた」
(イブン・ウマルは、どちらの言葉であったか記憶してないと語っている)
アッラーのみ使いは続けてこういわれた
「私は彼の後に、ちぢれ毛で赤ら顔の体格のよい、右目が盲の男を見た。
彼はイブン・カタンによく似た顔付きをしていた。
私が『彼は誰ですか』とたずねた時、人々は『マスィーフル・ダッジャールです』と教えてくれた」
ジャービル・ビン・アブドッラーによると、アッラーのみ使いはこういわれた
「クライシュ部族の人々が私の言葉を信じなかった時、私は、ヒジュル(カーバ神殿の西側にある半円径の囲い《ハテーム》壁)の処にいた。
この折、アッラーは私のために、バイトル・マクデス(エルサレムの神殿)を天空にあげて下さった。
私はそれを見ながら、クライシュ部族の人々に、そこの様々な特長(アーヤ)について語って聞かせた」
ウマル・ビン・ハッターブによると、アッラーのみ使いは或る時こういわれた
「私は夢の中でカーバをタワーフしている自分自身を見た。
私はまたそこで、柔らかな長い髪をした色白の美しい人物が二人の男にはさまれながら、カーバのタワーフをする姿を見た。
彼の頭からは水がしたたり落ちていた(もしくは、頭から水が流れていた)
『彼は誰ですか』と私がたずねると、人々は『マリヤの息子です』と教えてくれた。
それから私は前方に進み周囲をながめまわした。
その時赤ら顔で頑丈そうな、頭髪がちぢれ、しかも片目が脹れあがってぶどうのようになっている男を見かけた。
私が『彼は誰ですか』とたずねると人々は『彼はダッジャールです』と教えてくれた。
ダッジャールは、イブン・カタンによく似た人物だった」
アブー・フライラによると、アッラーのみ使いはこういわれた
「私は夢の中でヒジュルの処におり、クライシュ部族の者らに、“夜の旅”について質問されていた。
私はバイトル・マクデスの様子をたずねられたが、それに関してよくは記憶してなかった。
そのため私はかつて経験したことのないほど大変困惑してしまった。
するとその時アッラーは、バイトル・マクデスを私の目の前に浮び上がらせて下さった。
そのお陰で私はようやく彼らの質問に何でも答えることができたのであった。
私はまた、私自身が他の預言者らと一緒にいる夢を見た。
そこではモーゼが立って礼拝をしていた。
彼はあたかもシャヌーア部族出身者のように、立派な体格をした人物だった。
私はまたマリヤの子イエスが立って礼拝している姿をも見かけたが、身近な人々の中で最もよくイエスに似ているのは、ウルワ・ビン・マスウード・サカフィーである。
私はまた、アブラハムが立って礼拝しているのを見たが、彼に最もよく似た人はあなた方の教友、すなわちムハンマド自身であろう。
礼拝の折には、私が彼らのイマーム(導師)となった。私が礼拝を終えた時、或る人がこういった
『ムハンマドよ、ここに地獄の主、マーリクがいる。彼に挨拶なさい』
それで私は彼の方をむいたが、彼の方から先に挨拶してくれた」